隣人の本棚 vol.2 〜歌集・詩集・句集〜
- 菊竹胡乃美
- 2019年3月13日
- 読了時間: 6分
こんばんは。福岡土産では「筑紫もち」が一番好きな菊竹です。
前回の「マンガ編」では、好評頂きありがとうございました!やっぱりみんな本棚気になるよね〜^^とうれしかったです。

第2回目の特集は「歌集・詩集・句集」です。読む機会が少ない人もいるかもしれませんが、心や感情にせまる本がたくさんあります。
今回お送りするのはこのメンバー!

〇平出奔
福岡出身栃木在住の文字列設計者(自称)。歌人って名乗るのが照れ臭くて考えた肩書きだけど、却って恥ずかしい気がしてきた。 好きな飲み物はレモン牛乳。

〇コノミ
この企画の主催者。花粉症で目も鼻もヤバい。好きな飲み物はCCレモンとメロンソーダと牛乳。
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それではいってみましょー。まずは、平出さんから!


一段目、主に出版社から発行された商業流通の歌集が。

二段目、こちらは学生短歌会の機関誌や同人誌を。

三段目、平出さんが所属している結社「塔」の会誌があります。
本の多さがすごいですね!学生短歌誌や同人冊子も多くありますね〜。それではオススメの2冊を紹介して頂きましょう!

『花は泡、そこにいたって会いたいよ』初谷むい
~なんで買ったの?~
発売当初からTwitterでかなり話題になっていて、目に留まりました。ネットで何首か試し読みできたので読んでみたらそれがすごくよくて、そのまま勢いでamazonに注文しました。実は当時、私はまだ短歌ではなく小説をメインに活動していたのですが、その「界隈」を突き抜けて届いてくる存在感がありました。
~グッときた一首~
カーテンがふくらむ二次性徴みたい あ 願えば春は永遠なのか
初谷むい
とにかく、衝撃の一首でした。この一首によって私が短歌の世界に引きずり込まれたと言っても過言ではないほどです。
描かれる情景と思考の、その因果の成立の不思議に、心をわしづかみにされました。
そして、なにより衝撃だったのが「あ」の一文字です。57577の中に挿入された「あ」の一文字に、これほどまでに心を動かされるのか、たった一文字がこれほどの力を持つのか、と。この「あ」の後ろを追って、私は今、短歌をつくっています。
間違いなく、いま、短歌表現の最前線にある一冊だと思います。短歌を読んだことがある方にも、ない方にも、ぜひ読んでほしいです。心に直接さわってくるような生身のことばたちを一度受け入れたなら、ページを繰る手はきっと止まらなくなってしまうことでしょう。

『わたしを空腹にしないほうがいい』くどうれいん
~なんで買ったの?~
2018年6月の文学フリマ岩手で、著者のくどうさんご自身から購入しました。インパクトのあるタイトルと、なにより表紙のおいしそうな写真が決め手でした。
~グッときた一句~
ソーダ水すべてもしもの話でも
くどうれいん
俳句一句+エッセイ+食べ物の写真で一回と構成される本作。すてきな作品ばかりですが、特にぐっときたのはこの作品でした。
高校生時代のちょっとへんな男の子とのちょっとへんなデートの思い出が、ユーモラスかつどこか切なく描かれています。「間接キスにふさわしくない」は名言ですね。彼は元気にしているかなあ、と私からしたら全く赤の他人にも関わらずついついそう思わされました。
素敵な俳句、エッセイ、写真がいっぱい詰まったとっても素敵な一冊です。読んでいたらどんどんおなかが空いてくる……そして、盛岡に行きたくなる……。ちなみに、料理に役立つ知識もたまに書かれています。
すこし疲れたときなんかに何気なく手に取っては、くどうさんのユーモラスな文章とエピソードに元気づけられています。
今は、私が持っているものの後に発行された文庫版が各地書店または通販で購入できます。ご購入はこちらから→https://sunnyboybooks.net/items/5b780966ef843f723b00ce8a
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初谷さんの短歌に触れて平出さんは短歌の世界へ入ったんですね〜!おおお〜
私も大好きな歌人です。初谷さんの歌を読んでるとポカポカな感情になるというか、やさしいタオルケットに包まれてる気持ちになるというか…。そんな感じになります。
くどうさんの本のスタイルは新鮮で面白いですね!文庫版のサイズは手軽なので、おでかけのお供にピッタリです。
平出さん、ありがとうございました!
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次はコノミの本棚です。冊数は少ないですが、一冊一冊深〜く好きなものばかり。

幼少期、右側にある『百人一首 おもしろ大事典』を読みふけってドキドキした思い出があります。
それではオススメの2冊を紹介!

『林檎貫通式』飯田有子
~なんで買ったの?~
ある文芸イベントで「なぜ涙が砂糖味に設定されなかったかそんなの知ってる蟻がたかるからよ」という短歌が紹介され、ビックリ感動したので購入。
~グッときた一首~
たすけて枝毛姉さんたすけて西川毛布のタグたすけて夜中になで回す顔
飯田有子
文芸イベントの帰り道、短歌友達に「飯田有子さんて方、すごいですね。」と話すと「え、コノミちゃん知らないの?枝毛姉さんとか」と言われ(枝毛姉さんて何!)と思って面白かったのですが、その歌がこちら。新感覚すぎる…!
飯田さんの歌を見て、字余りや字足らずに関する悩みが吹き飛びました。それくらい衝撃だったし、新鮮な世界観だった。ありのままを歌にしてOKなのかもと思えて、自由にやろうと決めたきっかけになりました。

『ビリー・ジョーの大地』 作/カレン・ヘス 訳/伊藤比呂美
~あらすじ~
1934年、大恐慌まっただ中のアメリカ・オクラホマ。14歳の少女ビリー・ジョーは、無口な農夫の父と厳格な母と、それなりにしあわせに生活していた。しかし、悲劇が…。
少女の強靱で無垢な魂の叫び。ビリー・ジョーが語る自由詩で構成された小説。ニューベリー賞受賞作品。(amazonより)
~なんで買ったの?~
母からのプレゼント。
~グッときた一編~
頼まれても何も…… | February 1934
この3年間、小麦の収穫がろくにない。
31年※に豊作があってそれっきり
ずっと、出来の悪いのがつづいている。
だから最近うちはみんな
おなかの大きなかあさんでさえ
骨までけずられたみたいになっている。
それでもかあさんは
教会の人たちが頼みに来たとき
アップルソースのびんを3つと
豚の塩づけを少しと
古いかいば袋でつくったベビー服
生まれてくるうちの赤ちゃんのために縫ったやつを
寄付した。
※1931年
日記のような、詩のような小説で構成された作品。独特な言葉選びや文章のかたさが、家族や環境に対していろんな思いを抱えながら生きるビリー・ジョーの姿をありありと写します。一行一行のリズムがよく、追い立てられるように読みました。
訳者の伊藤さんの解説が面白くて、独特の文章をどう訳していこうかいろいろと模索したことが書かれています。
ちなみに伊藤比呂美さんという方は詩人です。この方の作品も生々しくて気持ちが揺さぶられるのでオススメ。
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以上、「隣人の本棚」でした!気になるものがあればぜひ見てみてくださいね。
次回のジャンルは≪長編&短編小説・エッセイ≫です。お楽しみに!
2019.3.13
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